昭和大学 呼吸器・アレルギー内科学部門の診療・研究内容


研究内容(喘息・アレルギーグループ)

喘息・アレルギーグループは相良教授を中心に構成されるグループで、日常臨床から臨床研究、そして基礎研究まで幅広い分野において活動を行っています。3代前の教授である川上保雄教授の時代にはアレルゲンを用いてアレルギーを改善させる減感作療法を我が国で最も早く導入し、その後も急速減感作療法の確立、現在の喘息治療のスタンダードである吸入ステロイドの普及など、我が国の喘息診療において様々な分野において貢献してきました。現在、臨床研究は喘息と食物アレルギーを中心に行っており、基礎研究はおもに培養細胞を用いるin vitroの研究と、実験動物を用いるin vivoの研究を中心に行っています。

 

臨床研究の対象は喘息が中心となります。軽症から重症、そして診断から治療まで幅広く研究を実施していますが、特に力を入れているのは、喘息の病態解明(特に難治化の解明)と治療です。中でも、IgEの喘息病態への関与についてさまざまなアプローチを用いて研究を行っております。喘息やCOPDに関しては、患者の気道上皮細胞を気管支鏡にて直接採取し、採取した細胞を用いて、抗原や喫煙などに対する反応性や薬剤の効果に関する研究を行っております。疫学研究も含め、多施設との共同研究も行っております。治療に関しては、現在多くの新規分子生物学的製剤の臨床研究を進行しています。また、基本治療である吸入ステロイドから分子標的薬の抗IgE抗体療法まで現在使用可能である薬剤については、どの組み合わせで、どのように投与し、いつまで投与するのかなど最適な使用法についての研究も行っています。喘息に関する臨床研究では、国内有数の多くの喘息患者の診療から得られる様々なデータを基に常に新しい情報を発信し続けています。

 

最近では、小児の食物アレルギーが社会問題となっていますが、成人においても食物アレルギーの頻度は年々増加しています。当科には全国的にも珍しい成人の食物アレルギー専門外来があり、鈴木助教を中心に食物アレルギー患者の診療にあったっています。その中で得られる個々の希少症例の徹底解析をはじめ成人食物アレルギーの疫学調査などを行っています。

 

基礎研究に関しては、in vitroと呼ばれるおもに培養細胞を用いた研究と、in vivoと呼ばれる動物を用いた研究があります。in vitroの研究は本間助教を中心に、主に気道上皮細胞を用いてウイルス感染など喘息における増悪シグナルに対する反応とそれに対する治療などについて行っています。in vivoの研究は大田助教を中心に、新規薬剤の開発や低酸素など特殊環境のマウス喘息モデルへの影響について行っています。

 

研究内容(睡眠時無呼吸 SAS)

睡眠中に何回も呼吸が止まり、高血圧症などの合併症が増加し、重症の場合、心筋梗塞や脳梗塞による死亡率が30~40%に上昇する疾患が睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome;SAS)です。合併症ばかりでなく、日中の眠気から交通事故や労働災害の割合も上昇し、個人だけでなく社会的にも損失です。重症患者は1時間に30回以上も呼吸が止まり、患者によっては無呼吸時の酸素飽和度が50%以下まで低下します。SAS患者では高血圧症、糖尿病、脂質代謝異常症といった生活習慣病の合併が多く、体内では炎症の亢進、酸化ストレスの亢進、凝固能の亢進、循環動態の悪化、繰り返す低酸素血症などにより動脈硬化が進展し、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの動脈硬化性疾患が増加します。このような複雑なSASの病態の解明に向けて、同意の得られた患者さんから血液や尿の検体を採取し、種々の検討を行っています。また、繰り返す低酸素血症を間歇的低酸素(Intermittent Hypoxia;IH)と呼びますが、IHがSASの病態の中心の一つと考えられています。我々はマウスにIH曝露を行うと血圧の上昇、インスリン抵抗性の悪化、膵臓β細胞の増殖などを来すことを突き止めました。今後も臨床研究と基礎研究を両立させたトランスレーショナルリサーチを続けて行こうと考えています。

 

COPD

COPDの臨床は薬物療法とともに教育および呼吸器リハビリテーションを加えた包括的な診療を心がけてきた。禁煙指導、教育評価の為の入院指導、薬剤の反応性の評価、増悪予防の為のアクションプラン、年に2回のCOPD教室、活動性を増す為の試み、などを行ってきた。今後さらに増えると考えられる患者の早期発見を地域との連携で行っていく事、また合併症を持つ患者に対する他の診療科との交流、新しく開発されてくる薬剤に対する使い分けなどが今後の課題である。看護師、薬剤師、栄養士、理学療法士、酸素業者などと協力して診療にあたっている。

 

呼吸器感染症

呼吸器感染症は市中肺炎のみならず、高齢化社会になり増加傾向のある肺炎から、中高年に増加傾向のある非結核性抗酸菌症、再興感染症である結核症、COPDや基礎疾患のある患者に併発するアスペルギルス症などの真菌感染症などが診療の主体となっている。原因微生物を特定して抗微生物薬を適正に用いる事を大切にしているため、良質な検体を出すように務め、検査室との連携を密にしている。診断困難な感染症には気管支鏡をも積極的に用いた確実な診療を心がけている。研究面ではM.abiumに対するIgM抗体の試用は早く、画像と培養結果との対比などを行い有用性の評価を行っている。また呼吸器内科医の立場から院内感染対策にも貢献している。