診療

呼吸器

呼吸器には多くの疾患がありますが、感染性疾患、腫瘍性疾患、免疫・炎症性肺疾患に大きく分けられます。何よりも正確な診断が内科学の基本であるため、病歴を慎重に聴取し、適切な検査を行うことを心がけています。

感染性疾患

社会活動に大きな影響を与えた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が代表的ですが、原因となる病原体の同定が診療の基本です。この原則に従い、適切な治療薬を選択することが重要です。喀痰検査を中心に行いますが、急速に進行し、生命に関わる場合には、想定される病原体を挙げながら複数の治療薬による経験的治療(Empiric therapy)を展開します。

腫瘍性疾患

肺がんが最も重要です。適切な方法で生検を行い、がんの診断のみならず、分子標的治療や免疫治療に必要なバイオマーカー分析まで行えるようにします。画像検査を正確に評価することで、病期(ステージ)を決定し、適切な治療を迅速に提供できるようにしています。

炎症性肺疾患

慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎があります。いずれも進行性の疾患ですが、呼吸が全身の身体活動の土台となるため、リハビリテーションを含めた包括的な管理をしています。

各疾患に対して、診断や治療に難渋する場合は、多くの医師が集まって意見を出し合いながら最善の方法を探索します。

“呼吸器は生命を映し出す鏡”であることを常に心がけながら診療をしています。

睡眠

睡眠は人生の約三分の一を占め、日中の疲れを癒し、鋭気を養うものです。

しかし、様々な要因で障害されやすく、その効果が著しく低下します。

睡眠と一言にいっても、睡眠の質・量のどちらも重要となります。

睡眠の質に関しては、下記に挙げられるような睡眠障害による影響を受け、睡眠中のイベントであるため、その鑑別は主訴のみでは難しく、睡眠日誌や睡眠検査などの睡眠モニタリングが必要となります。

睡眠の量に関しては、理想の睡眠時間と言われているのは6-8 時間と言われてますが、実際の1日の平均睡眠時間は6 時間以上7 時間未満の割合が最も高く、男性33%、女性36%。
6時間未満の者の割合は、男性37%、女性40%。性・年齢階級別にみると、男性の30~50歳代、女性の40~60 歳代では4割を超えている。と、明らかな量が不足している状態です。

ここ1ヶ月間、睡眠で休養が十分にとれていない、いわゆる不眠の割合は日本国民の20.6%を占める(令和4 年国民健康・栄養調査)と報告され、平成21 年からの推移でみると有意に増加し、国民病として、厚生労働省のホームページでも睡眠対策のページがあるほどです。

※参考:厚生労働省ホームページ睡眠対策
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html

睡眠医療の適応である睡眠障害は、国際疾病分類のICD-10 にもG47 睡眠障害として規定されていますが、医学生や研修医の頃には学修する機会の少ないジャンルです。
具体的には、

  1. 不眠症
  2. 睡眠時無呼吸をはじめとした睡眠関連呼吸障害
  3. ナルコレプシーや中枢性過眠症
  4. 概日リズム睡眠覚醒障害、レム睡眠行動障害などの睡眠時随伴症
  5. むずむず脚症候群などの睡眠時運動障害
  6. 他疾患の影響による睡眠障害

などが挙げられ、また他疾患の影響による睡眠障害もある事から、様々な診療科と連携した対応が必要となります。

検査に関しても、昔からある自己記入式の睡眠日誌、保険適応はないが日々の記録となるアクチグラフ(最近はスマートウォッチで代用可能)、保険適応となる睡眠検査(簡易睡眠検査や終夜睡眠ポリグラフ:PSG、睡眠潜時反復検査:MSLT、覚醒維持検査:MWT)などを、用いて疾患の鑑別・診断を進め、治療を行います。

以上のように、症例として遭遇する頻度は多いのですが、スルーされてしまうことも多いものでもあるため、医学生や研修医の先生で興味があるようでしたら、一緒に学修・実践を進めましょう。

アレルギー

アレルギー専門チームは、アナフィラキシーや食物アレルギーのような命に関わる重篤な病態から、アニサキスアレルギーのような珍しいケース、花粉症のような身近な疾患まで、幅広いアレルギー疾患に対応しています。それぞれの症状や原因を詳しく評価し、一人ひとりに最適な治療を提供するよう努めています。そして、これらの疾患による苦痛や生活への支障を減らし、患者さんの生活の質(QOL)向上を目指しています。

当院は東京都内で2施設のみ指定されているアレルギー疾患医療拠点病院の一つであり、関東はもとより全国から患者さんをご紹介いただき、豊富な症例実績を有しています。

拠点病院として、医療従事者の研修や患者さん・ご家族への啓発にも力を入れており、全国各地で講演会を開いており、患者かいとの連携も含めております(アニサキスアレルギー協会など)。また、成人アレルギーとしては珍しく、プリックテスト、皮内テスト、負荷テストをプロトコール化して施行しており、全国有数の症例数を誇ります。特にアニサキスアレルギーや好酸球性消化管疾患に関しては、全国的にも希少な専門外来を設けており、全国の患者さんのニーズに応えています。当科の強みの一つとして、今井教授(小児科)・猪俣教授(皮膚科)・平野准教授(耳鼻科)らとの多診療科連携体制が挙げられ、各分野の専門知識を結集した包括的な診療を提供しています。さらに、国立相模原病院など全国の拠点病院との連携や臨床研究にも積極的に参加し、最新の知見に基づくアレルギー医療の発展に貢献しています。

アレルギー学の詳細ページを作成しておりますので、ご参考までによろしくお願いします。
アレルギー疾患について

成人のアナフィラキシー患者指導について

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患者統計

2022年度 2023年度 2024年度
外来延べ患者 29,996 30,421 41,315
初診患者数 1,219 2,016 2,097
外来紹介患者数 1,026 1,841 1,903
入院患者 1,466 1,459 1,331
検査実績
気管支内視鏡(全体) 276 256 198
経気管支肺生検 (TBLB) 126 74 98
気管支肺胞洗浄 (BAL) 83 71 46
超音波気管支鏡ガイド下針生検 (TBNA) 34 46 43
CTガイド下針生検 31 38 26
呼気一酸化窒素濃度測定 (FeNO) 431 1,059 943

疾患別入院患者数

悪性疾患

2022年度 2023年度 2024年度
肺がん 405 462 404
悪性胸膜中皮腫 9 5 5
縦郭腫瘍 4 8

感染症

2022年度 2023年度 2024年度
肺炎 157 187 283
誤嚥性肺炎 78 85 60
肺膿瘍・肺化膿症 18 22 28
非結核性抗酸菌症 21 31 15
肺結核 15 15 10
COVID-19 273 119 38
ニューモシスチス肺炎 5 10

胸膜疾患

2022年度 2023年度 2024年度
気胸 21 42 24
胸膜炎 10 6
膿胸 15 19 15

気道疾患・免疫関連疾患

2022年度 2023年度 2024年度
COPD/肺気腫 33 55 49
気管支喘息(ABPA含む) 22 51 72
好酸球性肺炎 13 6 8
気管支拡張症 3 3 3

びまん性肺疾患

2022年度 2023年度 2024年度
間質性肺炎 73 80 63
器質化肺炎 15 19 10
薬剤性肺障害 12 4 19
放射線肺炎 6 2
過敏性肺炎 3 6 3

その他

2022年度 2023年度 2024年度
睡眠時無呼吸症候群 126 251 330
アレルギー・アナフィラキシー 58 52 96
サルコイドーシス 6 6 8
血痰・喀血 7
胸水 11