診断・治療に専門性が必要な真菌診療
Fungal infections that require specialization for diagnosis and treatment

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真菌感染症

概要

真菌感染症(カビ)はその診断がときに困難であり、なかには治療抵抗性を示し、不幸な転機を辿ることがある。一般的に、深在性真菌感染症(しんざいせいしんきんしょう)は免疫不全状態など易感染性宿主に生じることが多く、原疾患の治療・管理に加え、合併症としての真菌感染症は医師が対応に苦慮することがある。本邦では65歳以上の高齢者が30%を占め、若年者でも生活習慣病、免疫抑制剤や生物学的製剤の使用者をはじめとした免疫不全状態の患者が新たに増えていくことが予想され、こうした集団が真菌感染症のリスク患者として重要である。

検査・治療

当科では主に肺に感染する真菌症;アスペルギルス、クリプトコックス、カンジダ、ムコール症などに対する診療を行っており、特に慢性肺アスペルギルス症や単純性肺アスペルギローマについては日常的な診療対象である。血液検査(抗原検査、沈降抗体含む)や画像検査、気管支鏡検査(細菌学的検査、病理学的検査)で速やかに診断し、アゾール系・エキノキャンディン系・ポリエン系などの抗真菌薬の中から適切な薬剤を選択して治療を行っている。また治療による改善・増悪(悪化)を示す良質な指標に乏しく、症例によって治療薬の継続期間定まりにくいため、真菌の治療は細菌感染症に比べて長期間を要することが多い。

患者さんへ

当院には真菌感染症のプロが在籍する感染症内科や、アスペルギローマを主体とした内科的治療で改善を認めない真菌感染症の手術に対応可能な呼吸器外科があります。当科は常にこれら診療科と連携しながら患者さんの治療にあたっています。

また真菌は感染症のみならず、アレルギー性疾患を引き起こします。その代表的な病態がアレルギー性気管支肺真菌症(Allergic bronchopulmonary mycosis:ABPM)です。重症・難治性喘息の診療を得意とする当教室では、多くの診療経験があり、喘息に対するバイオ製剤が有用だった症例などを学術的に検討しています。真菌と喘息に関連した基礎研究・臨床研究は当教室の主要なテーマのひとつであり、これまで多数の学術成果を挙げております。

学術業績・参考文献

Homma T et al. J Microbiol Immunol Infect 2016
Tanaka et al. Ann Allergy Asthma Immunol 2016
Homma T et al. Am J Respir Cell Mol Biol 2016
Fukuda Y et al. Chron Respir Dis 2018

著者

福田 陽佑