肺癌 -診断から治療にいたるまで-
Lung cancer-From diagnosis to treatment-

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肺癌
Lung cancer

概要

悪性腫瘍は我が国の総死亡の約3分の1を占め、生涯罹患率も増加している。肺癌に関しては、禁煙による予防や肺がん検診による早期発見などの方策が行われているものの、悪性腫瘍の中でも増加が著しい。死亡数は第1位であり、国民健康衛生上、最重要課題の一つとなっている。

検査

診断方法として、胸部X線、胸部CTなどの画像検査が初期診断として用いられる。気管支内視鏡、経皮的生検、外科的肺切除などの方法で病変が採取され、病理検査で確定診断となる。治療には病期(ステージ)の評価が重要であり、画像検査を中心にして進行の程度を評価し、I-IV期まで分類する。最終的な治療方法は、パフォーマンス・ステータス(身体活動度の指標)、併存合併症なども考慮し決定する。局所療法として外科的肺切除、放射線治療、全身療法として抗悪性腫瘍薬の使用がある。合わせて、有症状の場合は緩和療法(緩和ケア)を並行して行うことも重要視されている。

治療戦略

肺癌は組織型として小細胞肺癌、非小細胞肺癌に大別される。小細胞肺癌は肺癌全体の15%程度を占めるが、増殖が比較的早く、リンパ節や他臓器への転移も高頻度である。抗悪性腫瘍薬の反応性が比較的高いことから化学療法を中心に治療が行われる。遠隔臓器転移がなく、根治的放射線治療が可能な病期の場合は限局型、それ以外は進展型に分類される。限局型には化学放射線療法、進展型には化学療法を行うのが標準治療である。非小細胞肺癌は肺癌の大部分を占め、腺癌が最も多く、次に扁平上皮癌があり、大細胞癌、多形癌などの特殊な型も存在する。治療法として、早期(ステージI-II)の場合は外科的肺切除、または放射線治療が選択される。局所進行期(ステージIII)では切除可能な場合は外科的肺切除に加え、術後補助化学療法、切除不能の場合は化学放射線療法が選択される。進行期(ステージIV)の場合は、抗悪性腫瘍薬による全身療法が選択される。非小細胞肺癌における抗悪性腫瘍薬の発展は目覚ましく、発癌に関係する分子を標的として多くのキナーゼ阻害薬が開発、使用されている。また、がん免疫の機構を調整することで、抗腫瘍活性を増強する免疫チェックポイント阻害薬も使用されている。これらの抗悪性腫瘍薬は既存の殺細胞性抗悪性腫瘍薬とともに、単独や併用投与され、進行癌患者の治療成績を飛躍的に向上させている。

患者さんへ

当科では、呼吸器外科、放射線治療科、腫瘍内科、緩和医療科などの多くの診療科と協働し、チーム医療として診断から適切な治療を一連として行えるような体制を整備しています。また、総合サポートセンターとも協働し、就労相談や療養環境の調整まで包括的医療の提供を行っています。当科の中でも気管支鏡を施行する(した)症例を医局員全員で検討する気管支鏡カンファレンス、肺癌の新規治療患者ならびに課題症例の治療方針を議論する肺癌カンファレンスを毎週行っており、それに加えて上述した関連諸科の集まるキャンサーボード(肺がん)においても治療方針が議論されています。最適な医療提供し、結果をメンバー全員にフィードバックすることで次の治療につなげる体制が整備しています。

リンク

日本肺癌学会
https://www.haigan.gr.jp/modules/ippan/index.php?content_id=11

研究業績

楠本 壮二郎ほか. 高齢者肺癌患者に対する診断的気管支鏡検査の問題点(会議録). 肺癌. 2018; 58: 607.

山岡 利光ほか. EGFR-Mutationを伴う肺腺癌細胞株におけるEGFR-TKIとMET-TKIへの獲得耐性機序(会議録). 日本呼吸器学会誌. 2017; 6:203

著者

楠本 壮二郎