非結核性抗酸菌症

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非結核性抗酸菌症

概要

非結核性抗酸菌症(Nontuberculosis mycobacteria; NTM)は抗酸菌の一種である。池や沼などの湿地帯の水や土壌、農地や庭、水道水や浴室内など生活環境からも検出される菌である。これらの環境からの吸入曝露で発症するが、ヒト-ヒト感染はないとされる。

疫学

我が国におけるNTMの推定罹患率(2014年時)は14.7万人/10万人年と算出されており、年々増加傾向にある。関節リウマチ(特に生物学的製剤を使用している患者)やHIV感染症、痩せ型、中年女性とであることが罹患のリスクファクターとして考えられている。主に結節・気管支拡張型が80%、残りの20%が線維空洞型である(後述)。また近年真菌であるアスペルギルス感染症との合併が多いことも、トピックとして挙げられる。

症状

発熱、夜間盗汗、全身倦怠感、体重減少、咳嗽、喀痰、呼吸困難など、様々な症状を引き起こす。

検査・診断

確定診断は喀痰検査によってなされる。喀痰の喀出が難しい場合は、胃液の採取を行う場合がある。原則的には喀痰検査で2回、あるいは気管支鏡検査による検体採取により1回、NTMが検出された時点で確定診断になる。また血液検査としてMAC抗体の有用性が言われており、当院でも積極的に検査を行っている。画像検査ではCT検査が有用であり、結節・気管支拡張型では主に右中葉・左舌区に陰影が出ることが多い。

治療

主に結節・気管支拡張型では症状に乏しいことも多く、画像上の悪化がなければ、積極的な治療介入をせず、経過観察のみであることが多い。しかし線維・空洞型では発熱や咳嗽・喀痰などの呼吸器症状を有することが多く、クラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトールを中心とした多剤内服療法が中心となる。内服期間は、喀痰からの菌陰性化1年間を目安に治療を行うことが多いが、一定した見解が定まっておらず、副作用なども考慮して必要に応じて継続するケースも多い。

近隣の先生方へ

当院では多数のNTMの症例に対して診療にあたっています。診断、薬物治療を含めて適切な治療を行っていきます。治療に難渋するケースも含め、ぜひ当院にご紹介ください。

著者

佐藤 春奈