気管支喘息(ぜん息)に対するバイオ製剤

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気管支喘息(ぜん息)に対するバイオ製剤

吸入ステロイド (ICS) の普及によって多くの喘息患者のコントロールは良好な状態を維持できるようになったが、約5%の患者においてはICSを含む複数の喘息治療薬を投与しても十分な喘息コントロールが維持できない。このような患者に対して、分子生物学的製剤(バイオ製剤)が使用される。現在(2019年9月)のところ、実臨床で使用可能なバイオ製剤とその特徴を下記に記す。

1.抗IgE抗体(オマリズマブ、ゾレア®

適応は小児も含むアトピー型(アレルギー型)重症喘息で、投与量および投与間隔は総IgE値と体重から換算される。重症な慢性蕁麻疹や花粉症にも有効である。

2.抗IL-5抗体(メポリズマブ、ヌーカラ®

中和されたIL-5はIL-5受容体へ結合することが出来ず、その結果、好酸球が著しく減少し効果が発揮される。重症喘息の他に好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 (EGPA) にも適応がある。投与量は喘息とEGPAでは異なっており、喘息に対しては1回100mgを4週間隔、EGPAには1回300mgを4週間隔に皮下投与する。

3.抗IL-5受容体α抗体(ベンラリズマブ、ファセンラ®

メポリズマブと同様、好酸球を減少させることによって効果が発揮される。一般的に、末梢血好酸球を測定感度以下(つまりゼロ)まで減少させる。1回30mgを初回、4週後、8週後に投与し、以降は8週間隔に皮下投与する。

4.抗IL-4受容体α抗体(デュピルマブ、デュピクセント®

喘息とアトピー性皮膚炎、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に適応がある。12歳以上の小児にも使用できる。好酸球の末梢組織への遊走抑制、IgEの産生抑制など複数の作用機序が想定されている。喘息では、初回に600mgを皮下投与し、その後は1回300mgを2週間隔で皮下投与する。

患者さんへ

当院では上記すべてのバイオ製剤を外来で使用可能であり、患者個々の病態に応じて薬剤を選択します。4のデュピルマブのみが、医療従事者からの手技の指導のもと、患者が自宅などで自己注射することが承認されています。それ以外の薬剤は当科外来治療室にて医師・看護師が行います。

リンク:日本アレルギー学会 アレルギー診療での生物学的製剤(内科)
https://www.jsaweb.jp/modules/stwn/index.php?content_id=10

研究業績

田中 明彦.【喘息・COPD-病態の多様性の捉えかたと最適な治療選択】症例から考える病態の多様性と薬剤選択 症例から考える重症喘息に対する生物学的製剤の使い分け(解説/特集). 呼吸器ジャーナル. 2019; 67: 316-321.

相良 博典.【アレルギー疾患治療の最近の進歩と今後の動向】内科 気管支喘息を中心に(解説/特集).

アレルギー・免疫. 2016; 23: 1335-1346.

著者

田中 明彦