奇妙な“食物”アレルギー、アニサキスアレルギー

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アニサキスによるアレルギー

本来の意味の食物アレルギーは食べ物自体がアレルゲン(抗原)となって、それを摂取したヒトに生じるアレルギーのことです。しかし、なかには食物を汚染する物質や人工的に添加された物質、意図せず混入した物質によるアレルギーや過敏症で、さも食物アレルギーのような症状を呈するケースが存在します。

寄生虫であるアニサキスによるアレルギーは上記でいえば、「食物を汚染する物質」によるアレルギーといえます。もちろん魚介類に寄生したアニサキスからすれば、寄生した相手(魚介類)をヒトが食べることを想像していないわけであり、「汚染」という言葉は寄生虫アニサキスからすると「自然の摂理」「宿命」なわけですが。

アニサキスによるアレルギーは、魚介類に寄生したアニサキスをヒトが意図せず口にして発症する即時型アレルギー反応です。他の食物アレルギー同様、じんましん、呼吸困難、喘鳴、消化器症状(腹痛、嘔吐、下痢)、ときにショック(血圧低下や意識障害)を来します。当施設の印象では、他のアレルギーに比べて重症例が多く、繰り返し発症することで疑われ精査されることが多い、と感じています。

当施設では、診断だけでなく、再発予防、食事指導、将来的な魚介類の安全な摂取に関する説明などを専門医から行っています。

少なくないアナフィラキシーの要因

生の魚介類を摂取する機会が多い我が国だからこそ、幼少時期からアニサキスに曝露(ばくろ)する頻度が諸外国に比べて多く、アニサキスアレルギーは決して少なくないアナフィラキシーの要因だと考えます。現時点では、アニサキス由来のアレルゲンへの曝露を防ぐため魚介類の摂取を回避することが唯一の再発予防といえますが、いつまで続けるのか、どの程度厳しく行うのか、明確なコンセンサスは得られていない状況です。

著者

鈴木 慎太郎