特殊な食物アレルギー

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思春期~成人の食物アレルギー

抗原である食物の経口摂取により即時型アレルギー反応が生じ、種々のアレルギー症状が生じる小児と比べて、思春期~成人の食物アレルギーは発症型式が単純ではないことが少なくありません。食物摂取に加えて、運動や日常生活動作、旅行、服薬、ストレス、月経などの負荷がかかることで症状が誘発されることがあります。こうした増強因子の存在は、患者さんへの問診により明確になる場合もあれば、アナフィラキシーを繰りかえし発症してようやく気付かれる場合もあります。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

思春期~成人にかけて新規発症する食物アレルギーのなかで1、2位を争う頻度の病態が食物依存性運動誘発アナフィラキシーです。上述したように抗原となる食物を摂取した数時間以内に運動ないしは体動することでアナフィラキシーを生じます。感冒や薬剤摂取、歯科・外科的処置により症状が誘発されることもあります。

また、食物アレルギーの発症機序に関しても職業や住環境が関係していることがあり、食品製造や加工業に従事している患者さんの場合、口からだけでなく、眼や鼻腔といった粘膜、皮膚などから微量のアレルゲンが繰り返し侵入し、患者さんが知らぬ間に感作(アレルゲンに対するIgE抗体が出来ること)が成立し、食物アレルギーが発症するケースが知られています。

花粉―食物アレルギー症候群
Pollen Food Allergy Syndrome

近年、患者数が増加しているのが花粉―食物アレルギー症候群(Pollen Food Allergy Syndrome)です。花粉と食物のなかに共通した部分をもったアレルゲン蛋白が含まれることで、「交差反応」というメカニズムでヒトの体が誤反応してしまう病態です。果物、野菜、ナッツ類、豆乳、スパイスを摂取したのちに生じる、口腔内のかゆみ、違和感、痛みや、咽頭(のど)の違和感、軽度の呼吸困難感はこの病態が関与していることが多いです。ほとんどのケースは軽症ですが、ときに強い呼吸困難や全身のじんましんを生じて、アナフィラキシーに至るケースも存在します。こうした症状は放置するのではなく、アレルギー専門医を受診して精査をしてもらう必要があります。

著者

鈴木 慎太郎